藤の花の木版画 (東京江戸百景)

『藤』の季節です 「藤の花の版画」

「藤」の花には何となく“日本画”のイメージが有ります。「藤娘」なる“日本舞踊”が関係しているだからかもしれません。私としたら珍しくこの度「藤の花の版画」を作ってみました。

何故ならば「東京江戸百景」の一つに“亀戸天神の藤”を選定したからです。

学生時代、友人と浮世絵展を見に行きそこで広重の名所江戸百景「亀戸の藤」と出合った思い出があります。その時友人は、亀戸天神に行った事が無いので行って見たいと言い出したのです。江戸の頃と今とでは全然違う景色だろうに、とは思ったものの、百年以前の版画が今でも“行って見たい”と思わせる力を持っていた事に驚きました(恥ずかしながら私は何も感じなかった)。

その後、友人と藤の花が咲いていたと思われる亀戸天神の藤棚とコンクリート造りの太鼓橋を渡り、広重の描いた藤棚の位置を探しに行きました。(今は、その帰り道に寄った橋のたもとの船橋屋の葛餅の思い出しか無いが。)

と云う訳で、ここの景色は百景には絶対に外せない場所なのでした。広重に負けない作品を(かなりオーバーな表現ですが)という意気込みがあったかもしれません。

制作しながら思ったことですが、現在の藤棚が余りにも“豪華”過ぎる事でした。江戸時代も今のように豪華だった景色を広重が花の数を少なく品良く調整したものなのか、それとも今のように豪華に咲いていなかったのか、品良く咲かせて味わっていたものか、という疑問でした。

と云う事で、私の作品は現代風に“ガバッ”と咲かせてみました。バックのビル群が余り見えない様に。