アカマタ
小浜島スケッチ帳 14 完
東京に帰ってから小浜島の話を学生時代の仲間に話したら人類学の先生から「来年は私も連れて行ってくれ」と言われてしまった。三年目、羽田空港で先生と待ち合わせたら先生は傘を杖にして奥さん付き添いでよぼよぼと歩いて来た。30メートルも歩けない状態だったのでこの先どうしようと困ったが、後の祭りだった。
案の定、小浜に着いてからは、少し歩いては休み少し歩いては休みの、まるで介護状態だった。
太陽いっぱいの温かい小浜は、リハビリに良かったようで、3日後には、一人で散歩に出かけるようになり、1週間後には杖代わりの傘が不要になっていた。
「秘祭」と言われる『アカマタ』が小浜にも伝承されている事は私達を呼んでくれた隣人から聞いていた。祭りの時は「よそ者」は島から出てもらっていたと云われ、島民になりたいと努力していた隣人も、祭りには参加させてもらえていなかった。内緒で写真を写そうとした外部の研究者のカメラが壊されたとか、殺された等の凄い噂も耳にしていた。従って「写真」の記録も無いのではと思っていたら、人類学の先生が持参した学術書に「西表島の古見」のアカマタの写真が掲載されてあるのを発見した。その存在すらはぐらかしていた地元のお爺さんに見せたら、ちらっと見て、小声で「一寸違う」とつぶやいた。
そうなると一段と興味が湧くもので、何とかしてどんなものか知りたいと言う誘惑に駆られた。下手に大人に聞いて回ると警戒されるので、小さい子供に聞いて見たら、素直な子供はアカマタがお面を被った人間だとは思ってもいないようで、こんな感じ!と絵を描いて説明してくれた。話をもとに私の想像を加えたらこんな作品が出来上がった。自分の中の複雑な心境が渦巻きながらの作品となった。
写真 子供が描いた“アカマタ”からの想像画 「神々の牧の内 アカマタ」