東京江戸百景 紹介

東京江戸百景 紹介

企画 『東京江戸百景』を彫る

私の版画制作の原点となったのは、「宮澤賢治」「民俗芸能」で、ライフワークとして一生のテーマになっています。ちょっとカッコ良い言い方ですが、実は、私には余りにもテーマが大きすぎ、一生かけても届かない・・・と云った方が正解のようです。

賢治からは、生き方そのものと、作品に出て来る「天文」「鉱物」「化学」「植物」等々へと広がる“興味”を沢山頂いています。

民俗芸能は、庶民によって長い年月伝承されてきた芸能で、最初は“流行りもの”であったものが、地域に根差したものに進化・伝承されて来たものが多いので、私の作品も、どうしたら『感動』ある作品が作れるか、飽きられない作品になるかと云う課題の大きな参考になっています。

そんな“重圧”の中、ふと思い立ったのが「東京江戸百景」という企画でした。育った「世田谷」「東京」への感謝の意味をも込めて、何かまとめたいと云う気持ちから、“微かに残る江戸”を版画で残そうと考えたのです。

明らかに、広重の「名所江戸百景」を意識しての企画です。現に、明治以降には、小林清親の「新東京百景」、織田一磨の「新東京百景」、前川千帆等八人による「新東京百景」、最近では版画協会による「東京百景」、山高登氏の「東京昭和百景」など、多くの先達が百景を残しています。対抗心もあったかもしれませんが、“私だからの百景”を作りたいと思ったのが真意だと思います。

はたして「百景」も集まるものかと候補を集めて見ましたら、“有形”で江戸が残る景色は、建物が関東大震災と東京大空襲で殆ど消失しており、江戸城周辺の堀・石垣と数少ない神社・仏閣、庭園くらいしか残っていないと云う事実でした。幸いに、興味ある“無形”の民俗行事・芸能などの歳時が沢山伝承されていたので、めでたく“百景”集まりそうです。一年10作品のペースで行っても10年。少し長い目標を掲げて、「何処の場所をどういう構図で」等々と、楽しみたいと思っています。

 

今年〔2016年〕早いもので“3年目”となりました。2年で19点。少しペースが遅くなっています。マラソンで云うと、「これだけ走って未だ五分の一」。一番苦しい時かもしれません。最終地点を意識せずに、“気が付いたら百点出来ていた”と思うようにしたいと思います。

まだまだの一歩一歩を紹介して明日への活力に!と、制作順に紹介致したいと思います。