④ 藤田嗣治と平野政吉との事

「藤田嗣治」氏に関連して④

藤田嗣治と平野政吉との事

父は、戦争画に関連してか、何度か藤田嗣治のアトリエに伺ったようで、いろいろな逸話を私に話してくれました。

ある時は、「絵を描き始めたので見ていたら、右上から横に描き始め左隅まで来ると一段下がって今度は右側へと描き進み、最後の左下隅で書き終え、サインを入れて描き終えた。あれは、こんな事も出来るんだぞと、わざと私に見せたに違いない。」と話してくれました。一寸信じられない話ですが、その時の父は真面目でした。藤田のアトリエに関しては、その技法を盗もうと、多くの人が訪れたという話が残っており、父もその中の一人に数えられていたのかもしれません。ある時、「秋田の平野政吉氏の所に沢山絵があるという話ですが」と、話を向けたら、とぼけて「そうだってね、そしてそれは皆偽物だってね」と答えたという。その時父は、かなり食わせ者のおやじだと思ったそうで、平野氏との間で何かトラブルがあり、喧嘩別れのような形で帰ってきたのでは、と推測していた。

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