大久保 坦先生との出会い
「大久保 坦」先生との出会い
大きな影響を得た作家の三人目は、大久保 坦 先生です。
日版会では多くの先輩から「版画」を教わりました。姿勢・技法・感性等々一番勉強になったのが大久保坦先生でしょう。《勝手に「先生」と尊敬しているのは馬淵 聖(とおる)・大久保 坦(ゆたか)の二氏です》馬淵聖会長を支える事務局長として会をまとめており、私がそのお手伝いをする事になったので、直接色々なことを聞くことが出来ました。一見無口で取っ付き悪いイメージがありましたが、実は心優しい温和な、それでいて曲がったことは絶対許さない正義の塊の様な先生でした。(馬淵聖先生と同様に)
やっと聞きだした話では、叔父の「織田一麿」から石版画(リトグラフ)を習い、日版会等で作品を発表していましたが、馬淵先生から「木版画」を勧められ木版に転向したとの事でした。花の作品では、私が作りたいと思う花は既に先生が制作していたというように、常に先にいると云う存在でした。私が佐渡に旅行しようと思い、先生に良い所は?とお聞きした所、「宿根木」を推薦してくださいました。行って見たらすごく不便な地で、絵にするには凄く良い漁村でした。(実は「寅さん」に出て来るような有名な所でした)
晩年、日版会展に単色の作品を送って来ました。お歳で、作品が出来ず昔の作品を送ってきたのか、多色版画を作るのが大変なので一色摺りになったのかと話題になったのですが、答えは後者の“新作”でした。無駄を省いての“単色”が私の夢なのですが、未だこういう作品が作れない自分です。無理な背伸びをせず、いつかはこういう作品を作りたいとの目標にしています。